特定遺贈による農地の取得には許可が必要

 

  遺言で自分の財産を他人に与えることを遺贈といいます。

  農地を遺贈する場合、包括遺贈か特定遺贈かで農地法上の許可

 扱いが違ってきます。

 

 (1) 農地の包括遺贈・特定遺贈と許可申請

遺贈 

遺贈の内容

遺贈の相手 

農地法3条の     

  許可申請      

 包括遺贈   

財産の取得割合を示して  

遺贈する方法

相続人または相続人以外         不要 

特定遺贈 

農地を特定して遺贈する方法       同上     必要

 

 

 

◎ 特定遺贈によって農地を取得したときには、農地法3条に基づき、

  農業委員会又は県知事の許可を受けないと、農地の所有権移転

  登記ができず、農地を取得することはできません。

 

 ※ 遺贈による農地の所有権移転登記をするときには、「許可指令書」の添付

   が要求されますので、必ず、許可申請する必要があるということです。

 

 包括遺贈とは

   遺贈する財産を特定せず、遺産の全部又は一部を文字どおり包括的に遺贈

  することをいいます。

   たとえば「自分の財産の3分の1を〇〇に遺贈する」というように、遺産に対し

  て一定の割合を示して遺贈する方法です。 

   この場合、包括遺贈を受けると財産ばかりでなく、債務についても指示された

  割合だけは負担する義務が生じますので注意が必要です。             

   包括遺贈を受けた者(包括受遺者)は相続人と立場上は 同じになりますので、

  遺贈された財産以外の遺産全部の状況をみて、明らかに負債の方が多いとみら

  れる場合には、遺贈を放棄することも考えなければなりません。

   そのためには、家庭裁判所に正式な手続きをする必要があります。

   このように、包括遺贈は、相続の場合と同様の効果がありますので、包括的

  遺贈によって農地を取得したときには、農地法3条許可不要とされています。

   ただし、法改正により、新しく「届出」が必要になりましたので注意が必要です。 

                      

特定遺贈とは

  財産(農地等)を具体的に特定して遺贈する方法です。

  特定遺贈は、包括遺贈と異なり、遺言で指定された財産だけを取得する権利が

 発生するだけで、債務については、特に指示がない限り負担する必要はありません。

  この点で、包括遺贈とは大きな違いがあります。

  このため、特定遺贈は、通常の贈与や売買と同様、農地法3条許可が必要に

 なります。

  これは、農地法が、相続など特定の場合を除き、農地の処分を制限することで、

 適正かつ効率的に耕作する者に農地を取得されることを目的としているためです。

   従って、遺言で、特定の人に農地を遺贈しても、遺贈を受けた者が農地法の許

 可要件を満たさず、そのため、せっかく遺贈を受けても登記ができず、農地を取得

 できない場合もありますので、農地を遺贈する場合には、農地法上の許可要件を

 考えて行う必要があります。

  尚、農地以外に転用してから遺贈するという方法も考えられます。

 

 遺贈を受けるには、次の要件を満たす必要があります。

 

  @ 取得後の農地すべてについて耕作すること

  A 必要な農作業に常時従事すること

  B 取得後の経営面積が50アール以上となること

  C 住所地から農地までの距離等から効率的に耕作できること

 

 特定遺贈による農地の許可申請について ⇒ 「農地の権利移動と3条許可」 

 

 

 (2) 農地の遺贈と相続税


  農地を遺贈された場合、相続の場合と同様、相続税が課税されます。

 

  この場合、農業相続人が遺贈によって農地を取得したときには、一定の要件の

 もとに、相続税を猶予する制度が設けれています。

 

 相続税の納税猶予制度については ⇒ 「農地の相続と3条許可、税金」

 

  参考相続税がかかる三つのケース

      @ 相続による財産の取得

      A 遺贈による財産の取得

      B 死因贈与による財産の取得

 

 注意:農地を遺贈された者が、許可申請する前に死亡したときには「許可指令書」

  を受けることが出来ませんので、遺贈されても、所有権移転登記ができず、農地

  を取得することはできなくなります。

   被相続人よりも先に受遺者が死亡したときには、遺贈は無効になります。