暦年課税と贈与税について
1.暦年課税
2.贈与税の速算表〜税率
3.贈与税の計算方法
4.贈与税の配偶者控除の特例
5.住宅取得等資金の贈与の特例
( 暦年課税・住宅取得の相続時精算課税との併用 )
6.農地等の贈与を受けた場合の納税猶予
7.暦年課税方式の節税のポイント
1.暦年課税 〜 通常の贈与の課税方式 |
贈与税は、通常、1月1日から12月31日までの1年間に、 個人から贈与を受けた個人ごとに課税されます。
1年間に受けた贈与の合計額から基礎控除額110万円を差し 引き、残額(基礎控除後の課税価格)に対して一定の税率を掛け て税額を計算し、翌年の3月15日までに申告・納付することに なります。 (贈与者が複数人であっても基礎控除額は、年間110万円) 贈与の額が年間110万円以下の場合には、贈与税の申告も必 要ありません。
<相続開始前3年以内の贈与の扱いについて>
相続または遺贈によって財産を取得した者が、相続開始前3年 以内に被相続人から贈与を受けた場合には、その財産については 相続税の課税価格に加算されることになっています。 相続や遺贈によって財産を取得しない者、例えば、孫・嫁・娘 婿・兄弟姉妹への贈与については相続財産に加算されません。
ただし、相続開始前3年以内の贈与を受けて贈与税を支払って いる場合には、その分の贈与税については相続税額から控除され ますので、二重に課税されることはありません。
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2.贈与税の速算表 〜 税率 |
基礎控除後(※)の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
4,500万円以下 | 50% | 400万円 |
4,500万円超 | 50% | 400万円 |
※ 基礎控除額110万円を控除後の価格
<課税価格について>
@ 個々の財産の価額は、その財産の贈与があった時の時価に
よる。
A 実務上は、地上権など特定の財産以外は国税庁長官が定め
る財産評価基本通達によって評価した価額による。
B 個人から受けた贈与については、1年間の合計額を課税価
格とする。
C 人格のない社団や財団又は公益法人が贈与を受けた時は、
贈与者が二人以上であっても、贈与税の計算は、贈与者の異
なるごとに、各贈与者一人だけから贈与を受けたものとみな
して、それぞれ別々に課税価格を計算します。
3.贈与税の計算方法 |
計算手順 @ まず、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈 与によってもらった財産の価額を合計します。 A 次にその合計額から基礎控除額110万円を差し引きます。 B そして、その差し引いた金額に税率(速算表)を掛けます。 C 最後に、その額から控除額(速算表)※を差し引いて贈与税 額を出します。※基礎控除額とは異なるので注意。
計算例 1年間に贈与を受けた額が、450万円の場合 基礎控除後の課税価格の計算 450万円−110万円=340万円 贈与税額の計算 340万円×20%−25万円=43万円
1年間に贈与を受けた額が、800万円の場合 基礎控除後の課税価格の計算 800万円−110万円=690万円 贈与税額の計算 690万円×40%−125万円=151万円
※贈与税の申告書を翌年の2月1日から3月15日までに税務署 に提出して納税します。 |
4.贈与税の配偶者控除の特例 |
配偶者への財産の贈与については、配偶者の生活保障等を考慮 して、特別な規定が設けられ優遇されています。 次の要件を満たすと、贈与税の課税価格から、最高で2,000万 円(相続税評価額)が控除されます。2,000万円は、取引価格で はありませんので、金銭で贈与するよりも居住用の不動産で贈与 した方が有利になります。 (不動産の相続税評価額は取引時価の約80%とされています)
要件 以下要件をすべて満たす必要があります 1.婚姻期間が20年以上の配偶者への贈与であること (夫から妻へ、または、妻から夫へ) 2.贈与する財産が、居住用の不動産※であるか、または、居 住用不動産の取得のための金銭であること 3.贈与を受けた翌年の3月15日までに居住をし、または、 贈与を受けた金銭で居住用不動産を取得すること 4.その後、引き続き居住用不動産に居住する見込みであるこ と 5.前年以前に、同じ配偶者から贈与を受けて配偶者控除の適 用を受けていないこと
このような要件をすべて満たすことができると、基礎控除のほ かに、2,000万円をその年分の課税価格から控除できます。
2,000万円の金額は、取引価額ではなく、相続税評価額(取引 時価の約80%)によるので、金銭(居住用不動産の取得のた めの)による贈与より有利と言えます。 ただし、この「配偶者控除」は、同じ配偶者に対しては一度だ けの適用が認められ、何度も適用を受けることはできません。 同じ配偶者からは、一生に一度しか適用を受けることはできな いということです。
居住用不動産について (1)居住の用に供する@土地、A土地の上に存する権利(借地 権)、B家屋で日本国内に所在するものに限られる。
(2)土地と家屋のいずれか一方でもよいが、土地のみを贈与す る場合には、贈与を受けた配偶者の配偶者か、または贈与を 受けた配偶者の親族が家屋を所有していることが要件になり ます。
(3)土地や家屋の一部の贈与(持分の贈与)であってもよい。
また、この「配偶者控除」の特例を受けると、相続前3年以内 の贈与であっても相続税の課税価格に加算されないという利点 があります。(2,000万円を超えた部分に対しては、相続税の 課税価格に加算されます)
計算例 2,500万円の居住用の土地・家屋を贈与されたケース
2,500万円−配偶者控除2,000万円−基礎控除110万円 =390万円 ※配偶者控除の適用を受けると、基礎控除より先に配偶者控 除をして計算します 390万円×税率20%−速算表控除額25万円=贈与税額53万円
土地を贈与する場合のポイント 居住用の土地の「相続税評価額」を計算し @土地の評価額が2,000万円を超えない時 ↓ 土地を全部贈与し、建物についても一部又は全部を贈与する (建物の評価額=固定資産税評価額)
A土地の評価額が2,000万円を超える時 ↓ 土地の全体の評価額に対する2,000万円の比率の持分で贈与 する (4,000万円の評価額であれば、2分の1の持分を贈与する)
〇ワンポイントアドバイス 贈与税の配偶者控除を利用して居住用の土地(2,000万円分) を贈与することで、夫の財産から2,000万円を減らすことができ ます。
このため、夫の相続時には2,000万円×税率分だけ相続税の減 税になります。
ほど節税効果が大きくなります。
配偶者控除の特例を受けるための手続き
この特例を適用するためには、一定の書類を添付して、贈与税 の申告書を提出しなければなりません。たとえ2,110万円以下の 贈与で贈与税額が0円であっても、この手続きをしないと「配偶 者控除」は適用されませんので注意が必要です。 申告書には、配偶者控除の適用を受ける旨やその控除額の明細 を記載し、さらに、配偶者控除を受けようとする年の前年以前に 贈与税の配偶者控除の適用を受けていない旨を記載します。
(参考)贈与税申告書の添付書類(財産の贈与を受けた人)
(1)贈与者との婚姻期間を証明する書類 戸籍謄本または抄本及び戸籍の附票 贈与を受けた日から10日を経過した日以降に作成された もの (2)居住用不動産を取得したことを証明する書類 居住用不動産の登記簿謄本または抄本 (3)居住用不動産を居住用に使用していることを証明する書 類 住民票の写し(※居住用に使用した後に作成されたもの)
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5、住宅取得等資金の贈与の特例 |
住宅取得や増改築などの資金で、満20歳以上の人が直系 の父母や祖父母から贈予を受けた場合には非課税措置が設け られ、大幅に緩和されています。ただし、申告をしないと特 例が適用されません。
制度の内容 満20歳以上の人が、父母又は祖父母からの贈与によって住 宅取得等資金を取得し、翌年の3月15日までに全額を一定の 住宅の新築、購入、増改築などの対価に使用した場合に、一定 の金額が非課税となる、という制度。 「住宅取得等資金」には、その住宅等の敷地である土地等を 含むが、3月15日までに居住の用に使用することが条件とな っています。
受贈者の要件 @住宅取得等資金を贈与した人の直系卑属(子や孫)であること A住宅取得等資金の贈与を受けた日の属する年の1月1日におい て20歳以上であること B国内に住所を有する人、または国内に住所を有しない人で一定 の人であること C所得金額が2,000万円(給与所得者の場合は2,284万 円)以下の人であること
D配偶者、親族など一定の特別な関係がある人からの住宅の新築、 購入、増改築等でないこと E平成23年以前に、「住宅取得等資金の贈与税の非課税」の適 用を受けたことがない人であること
対象となる住宅の要件 1、新築住宅の場合 @床面積(専有面積)が50u以上240u以下であること ※住宅とともに取得する敷地に供されている土地・借地権も含む ※震災被災者は面積上の制限なし A店舗併用住宅は2分の1以上が住宅部分であること 2、中古住宅の場合 @床面積(専有面積)が50u以上240u以下であること Aマンションは25年以内、木造は20年以内に建築されたものであること この年数を超えている場合には、その住宅が耐震基準に適合している証明が あること B建築後住宅として使用されたものであること C店舗併用住宅については、2分の1以上が住宅部分であること 3、増改築の場合 @増改築の工事費用が100万円以上であること A床面積50u以上240u以下の家屋に対する増改築であること B店舗併用住宅は2分の1以上が住宅部分であること C工事費用の2分の1以上が住宅部分の費用であること ニュース<平成23年度法改正〜6月30日施行> ※平成23年1月1日以降に贈与で取得する財産に係る贈与税から適用 直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた場合の非課税枠措置等について、 適用対象となる住宅取得資金の範囲に、住宅の新築等に先行して、その敷地の 用に供される土地等を取得する場合、その土地等の取得資金も入ることになり ました。 住宅取得等資金贈与の特例の非課税金額 (A)一般住宅 (B)「省エネ性」または「耐震性」を備えた住宅 平成24年の非課税額 @一般の人 (A) 1,000万円 (B) 1,500万円 A震災被災者 (A) 1,000万円 (B) 1,500万円 平成25年の非課税金額 @一般の人 (A) 700万円 (B) 1,200万円 A震災被災者 (A) 1,000万円 (B) 1,500万円 平成26年の非課税金額 @一般の人 (A) 500万円 (B) 1,000万円 A震災被災者 (A) 1,000万円 (B) 1,500万円 ◎省エネ性、耐震性を備えた住宅とは、日本住宅性能表示基準に基づき、次の いずれかの基準を満たしている住宅をいいます (国土交通省告示第389号) @省エネルギー対策等級に係る評価が等級4の基準に適合している住宅 A構造駆体の倒壊等防止に係る評価が等級2、または等級3の基準に適合 している住宅 B地震に対する構造駆体の倒壊等防止、および損壊防止に係る評価が免震 建築物の基準に適合している住宅
☆ 暦年課税の基礎控除と併用した場合
この特例は、通常の贈与税の基礎控除(年間110万円まで非課税)が併用 できるので、それぞれ110万円と合わせて非課税となります。 例 : 平成24年において、一般の人が一般住宅の資金を贈与された場合 非課税金額 1,110万円(1,000万円 + 110万円)
☆「住宅取得の相続時精算課税」と併用した場合
「住宅取得等資金贈与の特例」を「住宅取得の相続時精算課税」と併用した場合 には、最大3,500万円(1,000万円+2,500万円)まで、贈与税が 非課税となります。(3,500万円を超えた部分に対しては20%が課税)
<一般の相続時精算課税> 親(65歳以上)から子や孫(20歳以上)が贈与を受けても、 2,500万円までは贈与税が非課税という制度。 ただし、贈与された財産は、親の相続時に相続財産と合算された上で相続税が 計算され、贈与税を支払っている場合は相続税から控除されるというものです。 贈与財産の種類や金額、贈与回数に制限はありませんが、親からの贈与につい ては贈与者が亡くなるまで相続時精算課税が適用されます。 〇受贈者の要件 1.贈与者は65歳以上の親、受贈者は贈与者の推定相続人で20歳以上の 直系卑属(子や孫)であること。(年齢は贈与した年の1月1日現在) 2.国内に住所を有する人、国内に住所を有しない一定の人 3.配偶者や親族など、一定の特別な関係がある人からの住宅の新築、購入、 増改築などで無いこと。 ※贈与者である父・母ごとに、兄弟姉妹が別べつに選択が可能
<住宅取得の相続時精算課税> 親から住宅の購入資金の贈与を受けても2,500万円までは贈与税が非課税 で、2,500万円を超えた部分については一律20%の贈与税が課税されると いう制度。 「一般の相続時精算課税」とは異なり、親の年齢制限はありません。 ただし、3月15日までに住宅の居住に使用し、この特例を受ける旨を記載した 贈与税の申告書を提出しなければなりません。 申告書には「相続時精算課税選択届出書」の添付も必要です。
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6.農地等の贈与を受けた場合の納税猶予 |
農家の相続対策として、農業後継者に対して農地を贈与するこ とが考えられますが、通常の贈与では贈与税が多額になってしま い、負担が大きくなります。
ところが、「農地等を贈与した場合の贈与税の納税猶予」の適 用をうけた場合、当分の間、贈与税の納税が猶予されます。
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7.暦年課税方式の節税のポイント![]() |
贈与税は、相続税と比較して税率が高くなるので、贈与する時 は節税対策が必要!! こと。 て贈与すること。 (他、ゴルフ会員権、値下がりした上場株式など) 与」など、贈与税の有利な特典を活用すること。この特典の活 用は、確実に相続税の節税につながりますので、うまく活用し てください!
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