「相続させる」旨の遺言と「遺贈する」旨の遺言の違い|岩手遺言・相続相談センター

相続と遺贈について       

  

 遺言で、特定の遺産を特定の者に引き継がせるには、「相続させる」方法と

 「遺贈する」方法の二つがあります。 

 

  「相続させる」という遺言

  特定の遺産を、特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言があった場合、原則、

 遺産分割方法の指定とされますので、相続開始と同時に遺産分割を要せず、当然

 にその財産を取得するものとされています(相続財産が不動産の場合、遺贈を受

 けた者は単独で所有権移転登記をすることができます)  

  ただし「相続させる」相手は、法定相続人に限られ、相続人以外の者に「相続

 させる」旨の遺言することはできません。

 

「遺贈する」という遺言

 遺贈とは、遺言で、財産の全部または一部を、相続人又は相続人以外の人に無償

で贈与(譲渡)することをいい、その効力は、遺言者が死亡した時に発生し、所有

権移転の効果が生ずるとされています。

 ただし、遺贈の効果を、第三者に主張するためには、所有権移転登記等の対抗要件

が必要になります 

 従って、法定相続人以外の者に財産を取得させるには、遺言書を作成して「遺贈」

する方法しかありません。 ただし、  遺贈する場合は、他の相続人の「遺留分」に

配慮することを忘れてはいけません。

 遺留分権利者から侵害請求を受けると、侵害した部分については財産を返還しなけ

ればなりません。また、受遺者が、相続人と同じ「相続欠格事由」に該当する行為を

行ったときには、遺贈を受けることはできなくなります。

        

特定遺贈 と 包括遺贈

 特定遺贈とは、個々の財産を特定して遺贈する方法です。

  包括遺贈とは異なり、受遺者(遺贈を受けた者)は遺贈されたものだけ取得し、

 被相続人がどんなに多くの負債を抱えていたとしても負担する義務はありません。


 ◎特定遺贈の放棄は可能か? 

   遺贈を受けたくないときには、遺言者が死亡した後、いつで相続人遺言

  執行者に対して遺贈を放棄する旨を通知すればいいことになっています。

   なお、遺贈の放棄は遺言者の死亡後に行いますが、放棄の効力は遺言者の死亡

  時までさかのぼって発生します。 

   放棄の意思表示の方法・時期については特に制限はありませんが、後日、トラ

  ブルとならないためにも書面で行うようにお勧めします。 

   また、特定不動産の遺贈があった場合は、相続人が移転登記義務を負うことに

  なりますが、もし、遺言執行者が指定されているときには、遺言執行者が義務を

  履行することになります。                

            

 包括遺贈とは、個々の財産を特定しないで、割合で遺贈する方法です。

  財産の5分の1を遺贈するというように包括的割合を示して財産を取得させる

 方法。この場合、包括的受遺者は積極財産のみならず消極財産も承継します。


 ◎包括遺贈の放棄は可能か?                

   包括受遺者(包括的に遺贈を受けた者)は、相続人と同じ立場にたちますので、

  遺贈された割合で債務についても負担しなければなりません。従って、マイナス

  の財産の方が多い場合には、相続人と同様、遺贈の放棄や限定承認することで債

  務の負担を免れることができますが、家庭裁判所への正式な手続きが必要となり

  ます。なにもしないで3ヶ月経過すると、単純承認したものとみなされます。

   なお、包括遺贈の放棄は、特定遺贈の場合と同様に、遺言者の死亡後に行う

  ことができます。 


  負担付遺贈とは・・・相続人や第三者また社会公衆のために、一定の給付義務

           を負担させて行う遺贈の方法 。

 

特定遺贈と包括遺贈の違いのまとめ

       特定遺贈         包括遺贈 
内容 

「〇〇の土地」というように財

産を特定して遺贈する方法 

「財産の2分の1」を遺贈するという

ように財産を特定しないで遺贈する

方法 

受遺者の

権利義務

@債務については承継しない

A遺産分割協議に参加しない

受遺者は相続人と同じ権利義務を

持ちます

@相続財産の割合に応じて債務を

 負担する

A相続人と同じ資格で遺産分割協

 協議に参加する 

遺贈の放棄 

遺贈義務者(相続人等)に対

しいつでも放棄の意思表示を

することができる 

自分のために遺贈があったことを

知ったときから3カ月以内に遺贈の

放棄または限定承認をすることが

できる(家庭裁判所に手続きを行う)

 

遺贈のパターン

1.相続人に対する遺贈 

特定の相続人に、特定の財産を承継させたい

ときに遺贈する。

相続人に対する遺贈は特別受益になります。 

2.相続人ではない人に対する

  遺贈 

相続権の無い人(子の嫁、友人など)に財産

を譲りたい時に遺贈する。

3.負担つき遺贈 

受遺者に対して財産を与える代わりに、一定

の義務を負担させる遺贈。 

                 

遺贈の効力はいつ発生するのか?

  遺言者の死亡と同時に遺贈の効力が発生し、遺贈の目的物の権利は、受遺者

 に法律上移転します。農地の特定遺贈の場合は、農地法許可を受けなければ

 所有権移転登記ができませんので注意が必要です。ただし包括遺贈によって農地

 を取得した場合には、農地法の許可は不要となっています)

  ただし、遺贈によって不動産を取得した場合には、相続の場合と違って、所有権

 移転登記をしないと第三者に対抗できません。( この点が相続と違うところです)

  従って、不動産の遺贈があった場合には、遺言執行者に指定された人は、その点

 に十分留意して遺言執行をすすめていく必要があります。

  遺贈の登記は、受贈者が登記権利者となり、遺言執行者 または相続人を遺贈

 義務者として共同で登記申請を行います。  

 

受遺者が、遺言者より先に死亡したときは?

  この場合は、遺贈の効力は生じません。停止条件つきにした遺贈であっても、

 条件成就前に受遺者が死亡していたときには、遺贈の効力は発生しません。

  受遺者の相続人も遺贈を受けることは認められていません。相続人以外の第三者

 が受遺者であっても、相続人の場合と同様に代襲して遺贈を受けることはできませ

 ん。       

  遺贈する場合には、受遺者が先に亡くなった場合のことを考えて、予備的な遺言を

 をしておくと良いでしょう。

 

遺贈の執行義務者は誰か?

  遺言で、遺言執行者が指定されている場合には、指定された遺言執行者が義務を

 を履行することになります。遺言執行者が指定されていないときには、相続人全員

 が義務を負うことになります。

 

遺贈の放棄は可能か?

  包括遺贈を受けた者は、相続人と同一の権利義務を持ちますので、プラスの財産

 もマイナスの財産も包括的に承継します。遺産の状況をみて、遺贈を受けたくない

 ときは、家庭裁判所に遺贈の放棄の申述をすることで、遺言者の死亡時にさかのぼ

 って遺贈の効力が生じなくなります。遺贈を放棄するには、相続の放棄と同様、

 包括遺贈があったことを知った時から3ケ月以内に行います。

  何もしないで3ヶ月経過すると、単純承認したものとみなされ、遺言者の債務に

 ついても包括的に承継することになります注意が必要です。 

  これに対して、特定遺贈の場合は、プラス財産のみ取得しますので、遺贈の承認

 も放棄も時間・方法に制限はありませんので、いつでもできます。

  遺贈の放棄の効力は、遺贈義務者に対して、放棄の意思表示をしただけで、遺言

 者の死亡時にさかのぼって遺贈の効力が失われます。


 ◎相続人が遺贈を放棄した場合の効果

   相続人が遺贈を放棄した財産は、相続財産として相続人に帰属することになり、

  相続人が複数人のときは、遺産分割の対象となります。

   ただし、相続人が遺贈を放棄したからといって、相続人の相続権までなくなる

  わけではなく、相続財産が、遺贈の放棄によって増えるだけです。

   遺贈を受けた相続人が相続財産を一切承継したくないときには、遺贈の放棄の

  他、相続放棄も行う必要があります。包括遺贈を放棄するときは、家庭裁判所に

  申立を行います。


 ◎遺贈の放棄の範囲 

   特定遺贈の場合は、遺贈の内容が可分の場合にはその一部について放棄する

  ことも可能”とされています。これに対して、包括遺贈の場合には、遺贈の一部

  について放棄することはできない”とされています。

 

受遺者に欠格事由はあるか?

  受遺者に、相続人の欠格事由と同様の欠格事由があるときは、遺贈は受けられま

 せん。ただし、廃除された相続人であっても、 遺贈は受けることができます。

 

遺贈する場合の注意点

 @遺留分を侵害する遺贈があった場合、受遺者が 遺留分権利者から侵害請求を

  されると侵害した分については財産を返還しなければならなくなります。

  このため、遺贈する場合には、他の相続人の「遺留分」には十分配慮して行う

  ことが大切です。(遺留分侵害請求には時効があります)                

 A相続人以外の第三者に遺贈をする場合は、遺産分割協議でのトラブルを避ける

  ためにも、特定遺贈にした方 が良いでしょう。

 B遺贈をする場合には、スムーズに遺贈を執行するためにも、遺言執行者を指定

  しておいた方が良いでしょう。

 

           岩手遺言・相続相談センタ―

            相続専門 田村行政書士事務所

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